2022.06.30 お知らせ 【法学部・公務員特別演習Ⅲ(4年生)】ワークライフバランスを考える


 皆さん、「ワークライフバランス」という言葉を聞いたことがありますか?
 ワークライフバランスとは、「仕事と生活の調和」を意味します。誰もがこの調和をとれた働き方ができる社会を実現することは、国民全員が意欲をもって働きながら豊かさを実感して暮らせるようにするため、また社会全体の長期安定を実現するために重要な課題となっています。
 最近になってよく耳にするようになった言葉のように思う方もいるかもしれませんが、実は、2007年に策定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を踏まえ、約15年も前からすでに政府においても仕事と生活の調和実現のための施策が実施されています。
 
 本日は、6/24(金)に実施した法学部の中久保先生の公務員特別演習Ⅲ(4年生対象)での学修の様子を紹介します。この公務員特別演習Ⅲでは、いわゆる公安職と呼ばれる警察官、消防官等の地方公務員や、海上保安官、入国警備官、刑務官等の国家公務員を目指すための心構えや必要な素養、知識や組織研究、自己分析、社会情勢の分析について学修します。また、採用試験合格だけでなく、即戦力となる人材へと成長することを目的に実践的な演習に取り組んでいます。
 
 この日は、近年一般企業のみならず公安職でも積極的に取り組みが行われており、これまでの公安職公務員試験の論文やグループ討議の課題にもなった「ワークライフバランス」について、3つのグループに分かれてグループディスカッションを行いました。企業や組織において、人員が限られ、業務が多忙な中で、ワークライフバランスの実現は難しいとの指摘もある状況も踏まえながら、実現のための現実的で可能な方策について討論しました。

 

トップの意識改革でワークライフバランスを実現~中久保先生の経験を踏まえて~

 学生たちはグループ内でのそれぞれの役割(司会、タイムキーパー、書記、発表者)を素早く決定し、議論を開始しました。まずグループごとに議論の進め方を決め、それに従って制限時間内に議論し、意見をまとめ、発表を行いました。


 
 多くのグループで問題とした点は、「人手不足や賃金の安さによる残業、長時間労働の常態化」や「制度の曖昧さ、なかなか浸透しない組織体質」でした。これらに対し、AI導入による業務効率化やノー残業デー、フレックスタイム制、有給・育休取得などの制度を組織内で明確化し、各個人の業務スケジュールの見直しだけでなく上位者、幹部から積極的に制度に取り組むことなどを方策として考えました。
 これに対し、中久保先生からは、「現実的で可能な方策か」ということに焦点を当てつつ講評がありました。AI導入等については、費用面で企業によっては難しい場合もあり、公務員においても税収(財源)の限りがあり、地域や組織によっては難しい場合もあるということ。一方で、多忙な業務の中でワークライフバランスを実現するためには、学生からの意見にもあったように組織内上位者、幹部の意識改革が必要だと先生は強調し、自身の警察での実務経験についてもお話がありました。警察では、当直による休日出勤があるため、振替休日を取得させる必要があります。その際、先生は部下に対して事前に振替休日を取得する日を指定させ、必ず休ませるようにしていたそうです。そのほかにも、業務において優先順位を明確にし、課内、部内のみならず他部署にまたがって協力・集中して業務を行うことで効率的に業務が進むような組織づくりをしていたとお話がありました。
 
 このように、「公務員特別演習」では実務経験のある先生からのリアルな経験を聞くことができることもポイントであり、学生にとっても刺激的で、今回のお話にも感心している様子がうかがえたことが大変印象的でした。